15分読んだら、2円。シンガポールが読書にお金を出す

シンガポールの図書館を束ねるNLBが、1日15分の読書を記録すると20コインもらえる「ReadSG」を今月6日に開始。1000コインで1シンガポールドル。年末までの試験運用で、記録は自己申告。

みずき:…9月6日から大みそかまで、117日。毎日15分ずつ本を読んで、欠かさず記録して。……それで、もらえるのが270円。

ひかり:えっ何それっ! 読むだけでお金が出るのっ!? ……って、待って、270円っ!? 4か月でっ!? そもそも誰がくれるのそれっ!

ことね:シンガポールよ。あの国の図書館をまとめている国家図書館委員会——英語の頭文字でNLBね——が、今月6日に「ReadSG」という仕組みを始めたの。国として初めての「読書月間」に合わせてね。やることは、1日15分以上なにかを読んで、政府の投稿サイトに記録するだけ。それで20コインもらえるわ。1000コインで1シンガポールドル。いまのレートだと1シンガポールドルが115円くらいだから……15分で、2円ちょっとね。

ひかり:に、2円っ! ……うまい棒1本ぶんためるのに、1週間かかるってことっ!?

みずき:…しかも1日1回まで。3時間読んでも20コイン。……で、ほんとに読んだかどうかは、誰が確かめるの。

ことね:確かめないの。読書時間を計るアプリがあるわけじゃなくて、国のIDでログインして、自分で「読みました」と押すだけ。完全な自己申告よ。……NLB側も、この金額は収入ではなく「背中を押すためのもの」だと説明しているわ。お金以外の仕掛けもあってね。9月6日から10月7日までの記録は、そのまま「Read for Good」という寄付の企画にも乗るの。参加者ぜんぶの読書時間が750万分に届いたら、最大15万シンガポールドル——日本円で1700万円くらいが、子ども向けの読書支援や福祉の団体に回る仕組み。読んだ人の手元には2円、団体には本物のお金、というわけ。

ひなた:ふぁ〜……あの、ことね先輩。ひなた、おこづかいをもらってお皿を洗っていたら、もらえない日はやらなくなったのです。……本も、そうなりませんか?

ことね:ひなた……それ、ちゃんと名前のついている話よ。「アンダーマイニング効果」。好きでやっていたことにご褒美をつけると、目的がご褒美のほうに移って、なくなった瞬間に熱が冷める。……現地の金融メディアも、まさにそこを突いているの。NLB自身の調査では、シンガポールの大人の89%が週に1回以上なにかを読んでいるわ。ただ中身を見ると、ニュースが76%、ネットの記事が65%で、本は28%。その調査結果が出た去年の6月、当時のトップは「シンガポールの人たちの読書への変わらぬ愛に、とても勇気づけられた」と言っていたのよ。同じ数字が、1年で「手を打つべき問題」になった、と。……このあいだ話した日本の図書館とは、逆向きね。あちらはお金を出さなくても、人が集まっていたのだから。

みずき:…89%が読んでる国で、読ませるために金を配る。……読んでないのは活字じゃなくて、本のほうでしょ。そこに2円置いて、こっち向いて、って言ってる。

ひなた:ふぁ〜……ひなた、1日15分なら毎日読んでるのです。……おかしのふくろの裏。カロリーのところを、じっくり。

まとめ:毎日15分読んで、大みそかまで続けて270円。安い。その安さで人が本を開くかどうかは、年末にわかる。

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